携帯ポエム:光と蔭

失いたくないものがあった

譲れないものがあった

めまぐるしく 動く毎日の中で

めまぐるしく動く僕の鼓動の中で

時間はどんどん奪っていくけど

諦めたくないことがあった。

僕の体を奪う者とどれだけ長く居ても

僕の気持ちは変わらなかった

僕は僕自身が守らなければならなかった

さび付いた両手で血眼をこすると
瞼が真っ黒になっていった

日々感じる不安も 寂しさも 僕の両腕に 涙という形で吸い込まれていった

僕が道を歩くと
老婆が現れ
僕はその老婆をおぶり
市役所まで連れて行った

その老婆はずっとコモリウタを歌っていた。
ある時 歌うのを止めて こう言った
「陰が できるから 日向ができる 日向ができるから陰ができる
その境目に咲く花はやがて 枯れていく
枯れていった花が遺憾の涙を流す時
日向に雨が注ぎ
光に照らされた雨はさらに輝いてみえ

陰に注いだ雨によって
陰なる地面に 芽が出始める

その瞬間
陰は 日向に近付き
日向は影を照らす。」そう言った老婆は一気に眠りついた。

この老婆はぼけているんだと思った。でもこの話は何かの例えなんだと思った。
踊れない幼い妹に話そうと思った。


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